渓流で一人釣りをしていると「何しとるのかね?」と話しかけられた→そこには身体は犬、首から上は老爺の人面犬がお座りしており…

1: 以下、名無しにかわりまして裏島哲郎がお送りします:2004/04/04(日) 04:44:44.44 id:Oh9Puha

友人の話。

渓流で一人釣りをしていると、背後から声を掛けられた。
「何しとるのかね?」
鮎を釣ってるんだ、そう答えながら振り向くと、そこには異様なモノがいた。

身体は赤犬だったが、首から上の顔は老爺のものだった。
毛並みは綺麗にしてあり、きちんとお座りをしている。

驚いてポカンとしていると、人面犬は再び口を開いた。
「鮎か。久しく食っておらんの」

その言葉を聞いて、何故か恐怖より先に親近感が生まれたという。
釣り上げた鮎を人面犬の前に置いてやり、良ければどうぞと勧めてみた。

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「や、これはすまんの。ありがとう」
犬は感謝すること頻りで、大人しく鮎を喰らい始めた。
器用に前足で押さえながら、中々に上品な食べ振りだったという。
生で良いのかと問うたところ、生が良いのだと答える。

「薄味が好みでの。人の味付けはちと合わん」
そう言ってカラカラと笑った。

人間の顔してるのに?と彼がおかしそうに聞くと、
「そうよなぁ、おかしいわなぁ」とこれまた笑ってのける。

結局その日の午後一杯、犬は彼の横でゴロゴロとしていた。
他愛もない会話をしながら、時折お裾分けの鮎を齧って過ごす。
犬は山や沢のことに色々と詳しく、感心させられる話題もあったらしい。
彼曰く、中々に楽しい一時だったそうだ。

日没が近付き帰り支度を始めると、犬が別れの言葉を口にする。
「楽しかったよ。また来い」
自分も楽しかったよと返し、別れを告げてから山を下りた。

彼はその後も、何度かそのポイントへ出掛けているのだが、あれ以来
あの人面犬とは出会えていないという。

元気にしていたら良いんだけどな、そう言って彼は微笑んだ。

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