弟「幻覚だったかも知れないけど、本当に歩きたくなるような道だったんだ」

280 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/05/01 00:51

弟の体験。

だいぶ昔のことになる。
そのころ小学校低学年だった弟は、父に連れられて夜釣りに行った。
切り立つような崖の先端近くに父と並んで座り、暗い海面に釣り糸を垂れていた弟は、だんだん辺りが白く明るくなってきたことに気付いた。

「なんだ、もう朝になったんだ」
夜の海のあまりの暗さに、少々不気味さを感じていた弟はほっとした。
ふと正面を見ると、今まで何もなかった空間に、一本の道があることに弟は気付いた。
道は弟の足元から、優しい光の中へと真っ直ぐに続いている。
なんだか道が、自分を誘っているようだった。
弟は立ち上がって、何歩か前に踏み出した。

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すると突然、腕をつかまれてすごい勢いで後ろに引き戻された。
同時に父の声。
「何をやっているんだ!」
我に返った弟が辺りを見回してみれば、周囲には夜の闇。
眼下には黒い海面が見える。あの道はもうどこにもなかった。
弟は、転落まであと一歩というところだったそうだ。
自分が見たもののことを弟が父に話すと、父は妙に納得したように「そうか」と言ったらしい。

当時の私は不思議なこともあるものだと思っていたが、十数年たった今では、ただ単に弟が寝ぼけただけではないのかと思っている。徹夜で夜釣りだし。
弟もいまだにその時の道のことを覚えていて、
「幻覚だったかも知れないけど、本当に歩きたくなるような道だったんだ」
と言っている。

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