1: 以下、名無しにかわりまして裏島哲郎がお送りします:2004/04/04(日) 04:44:44.44 id:Ur4Ma6T
これはオレが子供の頃に体験したクリスマスにまつわる怖い話。
オレの家はかなり貧乏で、
住んでいたのは年季が入ったボロアパートだった。
欲しいモノなんて買ってもらえたことがなかったけど、クリスマスだけは別だった。
毎年25日の朝になると、きちんとしたギフトボックスに入ったプレゼントが置かれていた。
中身は文房具や安価なオモチャだったけれど、サンタクロースがオレのために用意してくれたんだとずいぶん喜んでいた記憶がある。
当時はまだサンタを信じていたので両親には何もお礼をせず、秘密の宝物として引き出しの中に大事にしまっておいた。
父親は毎晩酒を飲んでは酒臭い息でワケのわからない説教をするような人だったし、母親はそんな父親に嫌気がさし自分の人生を憐れむだけの人だったので、そんな心遣いをしてくれるとは、まさか思わなかったというのもある。
小学生中学年になるとサンタの正体に気づく。
毎年苦しい生活費の中から実は両親がプレゼントを贈ってくれていたのかと思うと感慨深くて、今年はちゃんとお礼をしようと思った。
24日のクリスマスイブの夜。
今年は何がもらえるのだろう、両親にどう感謝を伝えよう、
そんなことを考えると気が高ぶってなかなか寝つけなかった。
けど、気づかないうちに眠りに落ちていたようだ。
物音で目が覚めた。
枕元でカサカサと音がしていた。
プレゼントを置いてくれているんだ。
寝たふりをしないとと思いながらも、好奇心で見てみたい気持ちが勝り、
薄っすら目を開けて枕元を確認してみた。
叫び声を上げそうになったのをなんとか飲み込んだ。
枕元に立つ黒い影は、父でも母でもなかった。
それは人でない異形のモノだった。
ぼんやりとした影がかろうじて、人の形をとどめていて、
顔がある位置にはギョロギョロとした二つの目玉が
のぞいているだけで鼻も口も髪もない。
よく見ると、目は父親に似ている気がする。
けど、それが父でないのは明らかだった。
恐怖か眠気かわからないけど、
オレは意識を失った。
次に目が覚めた時には日が昇っていた。
枕元にプレゼントが置かれていた。
昨日のアレは何だったのだろう、
答えが出ないまま包みを開けた。
プレゼントの中身は当時流行っていた最新のゲーム機だった。
クラスでも持っている生徒は少ない。
なぜだかわからないけど目から涙がこぼれていた。
台所の母に聞くと、昨日父親は、飲みに行ったまま帰ってきていないという。
やはりアレは父ではなかったのだ。
誰がくれたのかわからないクリスマスプレゼントについては、黙っていることにした。
買い与えた覚えのないゲーム機でオレが遊んでいるのを見て2人とも不思議そうにしていたので、
本当に身に覚えがないらしかった。
奇妙なクリスマスプレゼントは小学6年まで続いた・・・。
大人になり結婚して自分の子供ができてから、サンタの正体は父親の生き霊だったのではないかと考えるようになった。
肝臓ガンで倒れた父親は、病院のベッドでしきりにオレに謝ってきた。
良き父になりたかったのになりきれなかった、そんな申し訳なさが父親にはあったのかもしれない。
そんな父親の気持ちが生霊と化してクリスマスイブの晩にだけ現れたのではないかと思ったのだ。
オレ自身の一人息子は今年で4歳になる。
妻と相談してはじめてクリスマスプレゼントをあげようという話になった。
けど、イブの夜に枕元に置いておくのはオレが断固反対した。
どうして反対したのかは自分でも理由が説明できない。
クリスマスの朝、プレゼントを用意して息子が起きるのをしばらく待っていると、バタバタと走る音が聴こえてきた。
どうやら起きたらしい。
「パパ、ありがとう!」
息子の手に包装されたギフトボックスが抱えられているのを見て、オレは自分が手に持っていたプレゼントを落とした。
奇妙なクリスマスプレゼントはまだ終わっていなかった・・・。

ええ…ちょっと不気味というか…
素直に喜んでいいプレゼントなんかそれ…
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