真夜中の訪問者

短編

由美は一人暮らしをしているが、最近、夜中になるとドアをノックされることが多くなった。毎回ドアを開けても誰もおらず、怖さを感じるようになった。ある晩、また同じようにノックの音が聞こえたが、今度は覗き穴を通して外を確認することにした。

由美は覗き穴から外を見た瞬間、そこに真っ黒な影が立っているのに気づいた。影は形がぼんやりとしており、顔もよく見えない。しかし、その影はじっとこちらを見つめているようだった。由美は恐怖に駆られ、ドアを開けることができず、そのまま身動きが取れなくなった。

影は動かない。静寂の中で、彼女の心臓の鼓動だけが聞こえる。数分間そのままの状態が続いたが、やがて影はゆっくりと姿を消していった。由美はその場でへたり込み、震えが止まらなかった。

次の日、彼女は隣人に昨夜のことを話したが、誰もそんな影を見たことがないと言われた。その夜もまた、ドアをノックする音が響いた。今度は由美は恐る恐るドアの前に立ち、覗き穴を確認したが、そこには誰もいなかった。しかし、ドアを開けた瞬間、背後からひんやりとした空気が流れ込み、何かが部屋の中に入ってくる気配がした。

その日から、由美は影を感じるようになった。夜中になると、どこからともなくその影が現れ、じっと彼女を見つめ続けるのだった。逃げ場のない恐怖が、彼女の生活を侵食していった。

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