奥の部屋に住む者

一人暮らしを始めたばかりの田中は、古いアパートの静けさに慣れようとしていた。しかし、夜になると、別の部屋からかすかな音が聞こえてくることに気づいた。最初は隣の部屋の住人が何かしているのだろうと思っていたが、音の出所はどうも違うようだった。

音はアパートの奥まった部屋から聞こえてくる。そこは使っていない物置部屋で、引っ越して以来、一度も入っていなかった。ある晩、音がいつもよりも大きくなり、田中はついにその部屋を確認しに行くことにした。ドアを開けると、何もないはずの部屋の中に、黒い人影が立っていた。

田中は驚いてドアを閉めたが、心臓が激しく脈打ち、恐怖に震えていた。再びドアを開ける勇気が出ず、そのまま部屋に閉じこもった。次の日、恐る恐るその部屋を再び確認しに行ったが、今度は何も見つからなかった。

しかし、夜になるとまた音が響き始めた。田中は眠れなくなり、音が出るたびに部屋を確認するが、何も見つからない。そしてある晩、音に誘われて再びその部屋のドアを開けると、部屋の奥に黒い影が座り込んでいた。影は静かに田中を見つめ、その目が光を放っていた。彼は恐怖に耐えきれず、そのアパートを逃げるようにして去ったが、彼が去った後も、影は部屋に残り続けたという。